今月の東洋医学女子
尾垣幸枝
愛知県出身
大阪府高槻市在住
愛知教育大学芸術学部染色専攻卒業
鍼灸師
京都仏眼鍼灸理療専門学校2016年卒業
大阪漢方鍼医会所属
東洋医学女子の働き方
『女性臨床鍼灸ならまち月燈』奈良県奈良市
週1日業務委託
『武田整形外科付属東洋医学センター』京都市西京区
週2日勤務
東洋医学女子の物語
history
一念発起で、鍼灸科のある専門学校の門を叩いたのが33才の時。大学では美術を専攻し、しかし好きで終わってしまっていた私が、本当に生涯取り組めることはなんだろうと考え抜いた上の結論が、鍼灸を勉強したいということでした。
鍼灸の専門学校卒業後、どんな治療をして行きたいのか?と考え、いくつかの鍼灸の研究会を覗いてみた末決めたのが、今所属している「大阪漢方鍼医会」です。
もともと氣というものに敏感だったところがある私は、鍼を刺さなくとも氣を通す「ていしん治療」というものにこの会を通じて出会うことが出来ました。
学校卒業後、京都市内の整形外科医院に勤務。週2回のリハビリ業務と鍼灸治療。そして週1回は奈良の「ならまち月燈」にて勤務。
今は「脈診」を診察の指針に据え、全く刺さない「ていしん」で気の調整をし、鍼の効果を持続させる為に「マグレイン」という置き鍼(針は付いていないのですが)を使用して治療を行なっています。
まさに鍼を体に刺したり、お灸を据えたり、体をさすったり揉んだりも全くしない治療です。その代わり、肌の質感、脈の僅かな拍動、その人が持つ氣の動きなど、見えにくいものを捉えようと日々奮闘しています。
初めは暗闇の世界でした。しかし尊敬する先輩鍼灸師の姿を仰ぎ、また理解されにくい治療であっても、自分が信じた道を貫きたいと臨床に取り組んできた結果、少しずつ光が差していき、周りの風景が徐々に見えるようになってきました。
人間が潜在的に持っている、豊かで深い感覚の旅はまだ始まったばかりです。
story
この世界に飛び込もうとしている方は、それまでに自分や身近な人の身体に向き合った際、なにかしら今の医療に疑問を抱いたことがある方なのでは?と思います。
私の場合、生まれた時からのアトピーとの付き合いと、妹のうつ病がきっかけでした。
両親が医療従事者ということもあって、幼い時はステロイドを使用した治療も行いましたが、根本的な解決にはならず、困った両親は私が小学5年生の時に鍼灸治療を私に受けさせることになりました。
思春期を迎える頃にはだいぶ肌もキレイになり、一時はアトピーであったことさえ忘れていましたが、24才の時、仕事のストレスが原因で、帯状疱疹とアトピーの再発。これを機に自分の身体の問題を自分の力で取り組んでいこうと考え、食事をゆるやかな玄米菜食にしたり、自然療法や野口整体の本を読むようになりました。
また妹が高校生ながらうつ病を発症したことで、家族の関係(特に親子関係ですね)がガタガタになり、病気は体が病むことだけでなるのではなく、心を抜きにすることはできないことを痛いほど思い知らされました。その時の経験も鍼灸師を目指すきっかけになったと、今になって思います。ですので、治療をする際は、体だけでなく、「身」の部分も一緒に診るように心がけています。
私は身体という言葉が好きです。体だけでなく、身だけでなく、身体というものを持つ私達は、決して物質だけの存在ではありません。だから非物質的なことも大切にして生きていかないと、どこかで病気というものを通して、警告が入る。「このままの生き方ではいけないよ」と病は教えてくれているのかもしれませんね。
西洋医学では抜け落ちがちな見えない、見えにくい領域を、大切に扱う。この姿勢をこれからも貫いていきたいと考えています。
message
私にとって東洋医学は、自分の中の自然に気づいていく手掛かりなのだと思っています。
確かに農薬や化学肥料を使って自然をコントロールしていくやり方もあります。
これまではそれが主流でした。医学しかり。
しかしこれからは雑草が生えていても、虫に喰われていても、そのままで有りたいと願う人が増える気がしています。
少なくとも私はそのように生きたい。
表面的なキレイさよりも、深くて本質的なものに少しでも触れて生きていきたい、そんな本能的な生き方を渇望している女子には、東洋医学は自分の身体と自然とを繋ぐ素晴らしいツールなのだと思う、今日この頃です。